すべり台の順番を抜かしてしまう。
「はい、どうぞ」の前に手が出る。
お店のレジで並んでいられない。
周りの目が気になって、外に出るのがしんどくなる時期があります。
「待つ」は、かなり高度なことです
順番を待つには、いくつものことを同時にしなければいけません。
- 今は自分の番ではない、と分かる
- あとどれくらいで自分の番か、見通しをもつ
- その間、やりたい気持ちをおさえる
- 自分の番が来たことに気づく
大人にとっては自動的にできることですが、子どもにとってはひとつずつ育てていく力です。
順番を守れないのは、しつけが足りないからではありません。
まだこの4つのどこかが育っている途中、というだけのことが多いです。
「待ちなさい」だけでは育ちにくい理由
待つ経験は、成功したときにだけ身につきます。
ところが、いきなり長い時間を待たせると、ほとんどの場合は失敗します。
失敗すると叱られる。叱られるから、待つ場面自体が嫌になる。
この繰り返しになってしまうと、なかなか前に進みません。
大事なのは、待てる長さから始めることです。
音楽は「待つ」の練習にとても向いています
理由は3つあります。
1. 待つ長さが目に見えない代わりに、耳で分かる
「あと3分」は分かりませんが、「この曲が終わるまで」は分かります。
音楽には始まりと終わりがあるので、見通しがもてます。
2. 待っている間も、退屈しない
音が鳴っている間は、聴くことそのものが活動になります。
何もない時間を我慢するより、はるかに待ちやすいです。
3. 自分の番が、音で分かる
「合図の音が鳴ったらどうぞ」にすると、大人が名前を呼ばなくてすみます。
呼ばれるのを待つより、音を待つほうが、集中が続く子は多いです。
おうちでできる、待つ練習
- 楽器を1つだけ用意する……交代で鳴らします。最初は5秒ずつで十分です
- 音が止まったら交代……大人が音を止めるので、時間を調整できます
- 待てたことを言葉にする……「待ってたね」と、その場で伝えます
- だんだん長くする……5秒が待てたら10秒。急がなくて大丈夫です
ポイントは、待てる長さから始めて、成功で終わることです。
レッスンでもやっていること
おとうたのレッスンでは、楽器を配るときに必ず順番があります。
少人数なので、待つ時間が長くなりすぎません。
これは意図的にそうしています。大人数だと、待つ時間が長すぎて失敗体験になりやすいからです。
集団が苦手なお子さんへのアプローチについては、こちらの記事でも書いています。
外出先で待てないときの、その場の対応
家で練習していても、外では難しいことがあります。
知らない場所、人が多い、いつ終わるか分からない。条件が全部きびしいからです。
その場でできることを挙げておきます。
- 終わりを見せる……「あと3人だよ」と数えられる形にする
- 手に何か持たせる……手が空いていると、動きたくなります
- 小さい声で歌う……知っている歌があると、その間は待てることがあります
- 並ばない選択をする……今日は無理だと思ったら、離れていい日にする
最後のものは、逃げているように感じるかもしれません。
でも、失敗して叱る一日にするより、そのほうがずっといいです。
周りの目が気になるときに
順番を抜かしてしまったとき、いちばんつらいのは保護者の方だと思います。
周りに謝りながら、子どもを叱って、帰り道で自分を責める。
それが続くと、外に出るのがこわくなります。
ここで書いておきたいのは、待てないことは発達の途中で必ず通る場所だということです。
周りの子ができているように見えても、その子も家では違うかもしれません。
比べる相手を減らすと、少し楽になります。
今できないことは、今の課題ではないかもしれません
順番が待てるようになるのは、多くの場合、少しずつです。
ある日突然できるようになることもあります。
周りと比べて焦る気持ちは自然ですが、比べる相手は去年のその子で十分です。
子どもの行動の見方については、YouTubeでも短い動画で話しています。
