遊びをやめてご飯にする。
お風呂に入る。出かける支度をする。
「次はこれね」と言っても動かない。何度も言ううちに、こちらの声が大きくなる。
毎日のことなので、消耗しますよね。
切り替えが苦手なのは、わがままとは限りません
特別支援学校で12年間、たくさんの子どもたちを見てきて感じるのは、切り替えのつまずきの多くが「見通しがもてないこと」から来ているということです。
今やっていることが、あと何分続くのか。
次に何が起きるのか。
それが分からないまま急に止められると、大人でも抵抗があります。
とくに、集中している最中に外から声をかけられると、切り替えの負担はさらに大きくなります。
声かけを増やすほど、届かなくなることがある
「もう終わりだよ」「早くして」「何回言わせるの」
言葉が増えるほど、子どもはどれが本当の合図なのか分からなくなります。
そして、聞き流すことを覚えてしまいます。
ここで役に立つのが、言葉ではない合図です。
「音」を合図にするという方法
レッスンでも、日常でも使える方法です。
1. いつも同じ音を使う
ピアノの決まったフレーズ、鈴、タイマーの音。何でもかまいません。
大事なのは毎回同じ音にすることです。
「この音が鳴ったら、おしまい」と体で覚えていきます。
2. 予告の音と、本番の音を分ける
いきなり終わりにせず、2段階にします。
1回鳴ったら「あと少し」。2回鳴ったら「おしまい」。
この「あと少し」があるだけで、心の準備ができます。
3. 次にやることを、音とセットにする
お片づけの歌、ごはんの歌。決まった歌があると、次の行動とつながります。
歌が始まった時点で、体が勝手に動き出す子もいます。
4. 切り替えられたら、そこで一度止まる
「できたね」だけで十分です。
そのまま次の指示を重ねると、切り替えられた達成感が消えてしまいます。
レッスンでも、同じことをしています
おとうたのレッスンは、はじまりの歌とおわりの歌が毎回同じです。
途中の内容は毎回変えますが、入口と出口だけは変えません。
「この歌が鳴ったら終わり」が分かっていると、最後まで安心して過ごせます。
これは、決まりごとを増やして縛るためではなく、安心して見通しをもつための工夫です。
子どもが安心できる環境づくりについては、こちらの記事で詳しく書いています。
音の合図が育つまでに、どれくらいかかるか
すぐには効きません。
最初の数日は、音が鳴っても今までどおりです。
それでも、同じ音を同じ場面で鳴らし続けることが大事です。
音と行動が結びつくまでには、時間がかかります。
途中で「効かないな」と別の音に変えてしまうと、また最初からになります。
ひとつの音で、しばらく続けてみてください。
やりがちな、逆効果のこと
- 音を鳴らしたのに、まだ続けさせる……音の意味がぶれます
- 怒った声と一緒に鳴らす……音そのものが嫌なものになります
- その日の気分で合図を変える……子どもが基準を持てません
いちばん大事なのは、鳴らしたら必ずそのとおりにすることです。
だから、鳴らすタイミングは大人の都合で決めていいのですが、鳴らしたあとは大人も守る必要があります。
下の子がいるご家庭でも使えます
音の合図は、きょうだいがいる場面でこそ役に立ちます。
名前を呼んで指示すると、呼ばれなかった子が反応しません。
音なら、全員に同時に届きます。
「この音が鳴ったら、みんなでお片づけ」にすると、上の子が下の子を促してくれることもあります。
うまくいかない日があっても大丈夫
体調や気分で、通じない日もあります。
そういう日は、方法が間違っているのではなく、その日がそういう日だっただけです。
続けていくと、合図が育っていきます。
日々の関わりのヒントは、YouTubeでも短い動画にしています。
