秋の運動会が近づくと、こんな心配の声を聞くことがあります。
「うちの子だけ、振りがずれている」
「行進で足がそろわない」
「練習が始まってから、園に行きたがらなくなった」
やる気の問題に見えることがありますが、そうとは限りません。
「体を思いどおりに動かす」こと自体が難しい子がいます
複数の動きを同時に、順番どおりに行うことを協調運動といいます。
手を叩きながら足踏みをする、音楽を聴きながら向きを変える、といった動きです。
この協調運動がうまくいきにくい状態は発達性協調運動症(DCD)と呼ばれ、子どものおよそ5〜6%にみられるといわれています。
クラスに1〜2人いる計算です。決してめずらしいことではありません。
気づかれやすいのは3〜5歳ごろ。転びやすい、物を落としやすい、といったことがサインになります。
ここで大事なのは、本人はサボっているわけでも、聞いていないわけでもないということです。
「苦手」の中身を、3つに分けて見てみる
ダンスが苦手、とひとことで言っても、つまずいている場所は子どもによって違います。
- ①覚えられない……振りの順番が頭に入らない
- ②合わせられない……振りは分かるが、音楽のテンポにのれない
- ③真似できない……前の人の動きを見て、自分の体に置きかえるのが難しい
①なら、動きを減らして順番を短くする。
②なら、ゆっくりのテンポから始める。
③なら、鏡になって向かい合うより、後ろから同じ向きで一緒に動くほうが分かりやすいことがあります。
どこでつまずいているかが分かるだけで、家での関わり方が変わります。
おうちでできる、体と音楽をつなぐ遊び
1. まねっこだけの遊びをする
言葉の説明をなくして、手拍子・グーパー・バンザイを大人が先にやって見せます。
見て真似るだけで成立するので、指示が通りにくい子でも入りやすい遊びです。
2. 音が止まったら止まる
音楽をかけて自由に歩き、止まったらストップ。
「合図を聴いて動きを変える」練習になります。運動会の号令にもつながります。
3. 歩く速さを変える
ゆっくり・ふつう・はやい、の3段階で歩いてみます。
テンポに体を合わせる感覚は、これがいちばん分かりやすいです。
4. 手だけ・足だけに分ける
同時が難しいときは、まず手だけ。できたら足だけ。最後に合わせます。
一度にやらせないことがコツです。
5. できた動きを、ひとつだけ褒める
全部を求めないでください。「今の手、そろってたね」で十分です。
本番に間に合わせようとしなくて大丈夫
おうちで猛練習をすると、音楽そのものが嫌いになってしまうことがあります。
運動会は一日ですが、体を動かす楽しさはずっと続きます。
指先の不器用さが気になる場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
また、落ち着かない・じっとしていられないという困りごとについては、この記事で詳しく書いています。
園の先生に相談するときの伝え方
家でできることには限りがあります。
園にお願いできることがあるなら、相談してみる価値はあります。
ただ、「ダンスが苦手なので配慮してください」だと、先生も何をすればいいか分かりません。
伝えるときは、具体的にすると通りやすくなります。
- 「前から2列目より後ろだと、前の子を見て真似できます」
- 「最初の隊形移動だけ、手をつないでもらえると動けます」
- 「本人は出たがっているので、参加の形を変える相談をさせてください」
先生は、その子だけを見ているわけではありません。
だからこそ、家庭から具体的な情報を渡すことが助けになります。
当日、うまくいかなかったときのために
振りがずれた。途中で泣いた。列から出てしまった。
そういう日もあります。
そのとき、家に帰ってから一番言いたくなるのが「なんでできなかったの」です。
でも、本人がいちばん分かっています。
かける言葉は、結果ではなく行った事実に向けるのがおすすめです。
「あの場所に立ってたね」「最後までいたね」で十分です。
来年も運動会はあります。今年の記憶が悪くないことのほうが、ずっと大事です。
おわりに
私は特別支援学校で12年間、体育や音楽の授業も担当してきました。
そこで何度も見たのは、できないのではなく、やり方が合っていないだけという場面です。
日々の関わり方のヒントは、YouTubeでも短い動画にしています。
